大判例

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東京地方裁判所 平成3年(ワ)6792号 判決

原告

ラスベガス・ヒルトン・コーポレーション

右代表者

ジェームス・ウイリアム・ニューマン

右訴訟代理人弁護士

齋藤浩貴

被告

青松俊明こと

沈春一

右訴訟代理人弁護士

吉田康

石川善一

鈴木高志

主文

一  右当事者間のアメリカ合衆国ネヴァダ連邦地方裁判所CV―S―九〇―二八五―HDM(RJJ)号事件について、同裁判所が一九九〇年六月二九日言渡した別紙記載の判決に基づき、原告は被告に対し、金一三万ドルの元本及び二万七一八四ドルの判決前利子並びに同日から同年七月九日までは金一八万七一八四ドルに対する、同月一〇日から右支払済みまでは金一五万七一八四ドルに対する、それぞれ年8.09パーセントの割合による金員の支払を命ずる限度で、強制執行することができる。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は、主文第一項に限り、仮に執行することが出来る。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  右当事者間のアメリカ合衆国ネヴァダ連邦地方裁判所CV―S―九〇―二八五―HDM(RJJ)号事件について、同裁判所が一九九〇年六月二九日言渡した別紙記載の判決に基づき、原告は被告に対し、強制執行することができる。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言を求める。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告被告間の、アメリカ合衆国ネヴァダ連邦地方裁判所CV―S―九〇―二八五―HDM(RJJ)号事件(以下「本件事件」という。)について、一九九〇年六月二九日に別紙記載の判決(以下「本件判決」という。)が言い渡されて、同日登録され、右判決は一九九一年三月二二日までに確定した。

2  被告は、一九九〇年五月五日、デザート・イン・ホテル・アンド・カジノにおいて、本件事件について、訴訟の開始に必要な呼出状の送達を受けた。

3  ネヴァタ州修正法第一七、三五〇条によれば、「外国判決の認証謄本は、当州のいずれの地方裁判所でも書記官が受け付ける。書記官は外国判決を当州の地方裁判所の判決と同様に処理するものとする。このように提出された外国判決は、当州の地方裁判所の判決と同様の効力を有し、これと同様の手続に付され、防御の機会が与えられ、同様に、再審、破棄、執行停止手続が適用され、同様に実施され履行され得る。」旨規定し、ネヴァタ州では外国判決に対しその効力を承認している。

4  よって、本件判決に基づいて強制執行を許可する旨の執行判決を求める。

二  請求原因に対する認否

認める。

三  抗弁

被告は、原告に対し、本件判決に基づく債務のうち、一九九〇年六月一六日に二万ドル、同年七月九日に三万ドルを支払い、原告は、いずれの弁済についても、右債務の元本に充当した。

四  抗弁に対する認否

認める。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因について

1  請求原因1及び2の事実は、証拠(〈書証番号略〉)により認めることができる(なお、これらの事実は当事者間に争いがない。)。

2 〈書証番号略〉によれば、アメリカ合衆国ネヴァダ州においては、外国判決は、信義・信頼をもって対処するに値するとみなされれば同州の地方裁判所の判決と同様の効力を有するものとされていることが明らかであり、我が国の民事訴訟法第二〇〇条と重要な点で異ならない条件のもとで外国判決の効力を承認しているということができるから、同条四号にいう「相互の保証ある」場合に該当するものと認めることが出来る(なお、この点についても当事者間に争いがない。)。

3  民事訴訟法第二〇〇条に定めるその余の要件についても、全証拠を総合するも、右要件に欠ける点は認められない。

二抗弁について

抗弁事実については当事者間に争いがない。

三結論

以上によれば、本件判決は、現在では、金一三万ドル及び二万七一八四ドルの判決前利子並びに判決登録日である一九九〇年(平成二年)六月二九日から金三万ドルの支払日である同年七月九日までは金一八万七一八四ドル、同月一〇日から右支払済みまでは金一五万七一八四円に対する、それぞれ年8.09パーセントの割合による金員の支払を命ずる限度で強制執行することができるものと解すべきであるから、右限度で原告の請求を認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条但書を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官田中康久 裁判官三代川三千代 裁判官谷口安史)

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